カップヌードル49周年

即席麺市場は第2ステージへ -中国を追いかける即席麺新興国とは

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生誕49周年を迎えたカップヌードル

先日、いつもの食品スーパーでカップ麺コーナーを物色していたところ、見慣れたような見慣れないようなパッケージのカップ麺があり、手に取ってみたら「カップヌードルの49周年バースデー記念パッケージ」でした。9月18日でカップヌードルは生誕49周年になりましたというメッセージですが、考えてみれば日清食品のカップヌードルは世界初のカップ麺ですので、「カップ麺生誕49周年」ということでもあるわけです。

カップヌードル「HAPPY BIRTHDAY 9.18」

2018年に放映されたNHKの連続ドラマ小説「まんぷく」。日清食品創業者の安藤百福をモデルにしたこのドラマを私は毎日欠かさず見ていました。何度も失敗しまくりながらカップ麺を作る安藤氏の姿がとても印象的でした。

食品スーパーでカップヌードル49周年のパッケージをみた瞬間、安藤氏のストーリーが頭をよぎったのだと思います。やはり商品の背景にある意味やストーリーというのは大事なのだな、と混み合うスーパーの中で思いふけっていました(怪しいおっさん)。

コロナ禍でさらに人気

今年で49歳になるカップ麺はコロナ禍の巣ごもり消費を受けてさらに人気が高まっています。下のグラフは家計のカップ麺支出額の推移を昨年と比べたものです。2月下旬ころから前年を上回るペースで伸び続けているのがわかります。

カップ麺の支出額の推移(日次ベース)

カップ麺の支出額の推移(日次ベース)

なかでもひときわ目立つ大きな山が2つあります。支出額は前年の2倍というすごさです。

一つ目の山は2月下旬から3月頭にかけて。これは2月27日に安倍首相が「週明けからの全校休校」を要請したことを受け、保存食としてのカップ麺への需要が急増したタイミングと一致しています。トイレットペーパーの買占めが世間を騒がせたのもこのころです。

2つ目の山は4月7日の緊急事態宣言前の駆け込み需要です。この時期はスーパーのカップ麺コーナーの棚は空の状態だったように記憶しています。

なお、カップ麺と同様にコロナ禍で支出が伸びているのが生麺のおいしさを自宅で味わえる「チルド麺」です。チルド麺は特に緊急事態宣言中に支出が急増しています。チルド麺については別の記事でも詳しく取り上げています。

高齢世代にも浸透するカップ麺

カップ麺人気はコロナ前から続いており、食料支出に占めるカップ麺の割合は年々増加傾向にあります。

カップ麺のボリューム層は若者世代ですが、ここ数年は高齢世代にも広がりをみせているようです。下のグラフにあるように、家計のカップ麺支出額は60歳以上の高齢世帯が一番伸びています。

かつての高齢世代は「カップ麺=体に悪い」という印象を持つ方も多かったようですが、カップ麺が誕生した1971年にカップ麺をすすっていた若者は今や60・70歳代になっているわけです。今の高齢世代はカップ麺に対する抵抗感はなくなっているといっていいでしょう。

年齢別にみたカップ麺支出額の推移(2010年=100)

年齢別にみたカップ麺の支出額の推移(2010年=100)

第2ステージに入った即席ラーメン市場

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グローバル市場は右肩上がり

カップ麺人気はしばらく続きそうな感じですが、かといって市場が拡大し続けると考えるのは早計でしょう。日本の場合、人口が急増するとか、カップ麺が主食のような存在にならない限り、カップ麺の市場規模が倍増するようなことにはならないからです。

日清をはじめとする製造メーカーは日本市場だけを狙っていては限界があるということで、だいぶ前から成長舞台をグローバル市場に移しています。海外では即席ラーメンというとカップ麺より安価に購入できる袋麺を指すことが多いので、海外ではまずは袋麺をベースに商品戦略を立てるようです。

ではカップ麺と袋麺を合わせた即席ラーメンのグローバル市場はどうなっているのでしょう。下のグラフにあるように、世界ラーメン協会のデータで確認すると、世界の即席ラーメン消費量は2014年頃にいったん頭打ちした後、再び右肩上がりで上昇を続けています。2019年は1,064食と過去最大の水準に達しています。後述するように、再浮上の背景にはインドをはじめとする即席ラーメン新興国の存在があります。世界の即席ラーメン市場は第2ステージに突入しているのです。

世界の即席ラーメン市場の推移

世界の即席ラーメン市場の推移

即席ラーメンの消費量を国別にみると、中国が414億食ともっとも多く、全体の半数近くが中国で消費されています。中国の次は、インドネシア(125億食)、インド(67億食)、日本(56億食)、ベトナム(54億食)と、日本は4位です。

次にどれだけ即席ラーメンが好まれているかを表す一人当たり消費量でみると、韓国が年間76食と断トツです。韓国の次は、ネパール(57食)、ベトナム(56食)、インドネシア(46食)となり、日本(44食)は6位です。ネパールが2位というのはやや意外な感じですが、同国ではおやつによく即席ラーメンを食べるそうです。

即席ラーメン「新興国」に期待

右肩上がりの即席ラーメン市場ですが、ここ数年は消費量の多い中国、インドネシア、韓国、ベトナムの伸び率が鈍化傾向にあります。先ほどのグラフで消費量が2013年に1,057億食に達したところで頭打ちしたのは、これら即席ラーメン先進国の消費量が鈍化したためです。一人当たり消費量の高い韓国やベトナムは即席ラーメンがかなり浸透していますので、伸び率が鈍化するのはむしろ当然の流れとも言えます。

即席ラーメン先進国が成長の壁に直面する中、即席ラーメン市場を第2ステージに導いているのが「即席ラーメン新興国」です。

下のグラフは即席ラーメンの一人当たり消費量と伸び率を国別にプロットしたものです。赤色の国が一人当たり消費量が平均を上回る即席ラーメン先進国です。先に見た韓国や中国、インドネシア、日本がここに入ります。伸び率をみると、グローバル平均を上回る国はネパールやタイ、ベトナムくらいで、成長の壁に直面している様子が見て取れます。

これに対し、一人当たり消費量は平均を下回るが消費量のが拡大傾向にある国が青色の「即席ラーメン新興国」です。一人当たり消費量がまだ低いので市場の伸びしろは十分あります。

世界の即席ラーメン市場 一人当たり消費量と伸び率

世界の即席ラーメン市場 一人当たり消費量と伸び率

即席ラーメン新興国の筆頭は人口13億のインドです。日清は早くからインドに注目し、1988年にインドに進出しています。ラーメン文化のないインドでラーメンを浸透させるのは大変な苦労だったようですが、マーケティング調査と商品開発を重ねることで事業も軌道に乗ってきました。インドのカップヌードルは全8種類、すべてスパイスを効かせたものです。私はまだ食べたことはないのですが、ブログやSNS投稿などをみると日本人の口にも合うようです。

インド以外のラーメン新興国は、中南米のメキシコ、チリ、ペルー、南アジアのバングラディシュ、アフリカのナイジェリアなどです。

さらに注目は、ラーメン文化のなかったフランスやイギリスなど欧州の先進国も即席ラーメンの消費量を伸ばしてる点です。日本への観光で日本のラーメンの素晴らしさを知り、自国でもラーメンを食べたいと思う人が増えているのでしょう。

東アジアを中心とする即席ラーメン先進国から、インド、南米、欧州などの即席ラーメン新興国に成長がバトンタッチされる。世界の即席ラーメン市場は第2ステージに入ったと言えるでしょう。

中国はまだ伸びしろがある

世界の即席ラーメン市場の成長を見通す上で一つ気になる国があります。中国です。中国は即席ラーメン先進国ですが、一人当たり消費量は28食でまだ上から10番目です。ラーメン発祥の地で10位というのはまだまだ伸びしろがあることを意味しています。414億食という圧倒的な消費量を勘案すれば、即席ラーメン新興国と一緒に第2ステージを引っ張る力は残っています。

ただ中国で即席ラーメンの一人当たり消費量を引き上げるには、デリバリーサービスとの競争などいくつかハードルをクリアしなくてはなりません。中国は外食文化ですので、おいしいラーメンが外で食べられます。そこにUber Eatsなどのデリバリーサービスが台頭したことで、自宅で食する即席ラーメンの需要がデリバリーに押される格好になっています。

デリバリーサービスにはない安さが即席ラーメンの魅力ではありますが、それだけでは成熟段階に入った中国の消費市場で競争力を保つのは厳しいと思われます。中国の即席ラーメンの最大手は「康师傅」という食品メーカーですが、商品のほとんどは100円以下です。

中国の即席ラーメンで求められるのは高付加価値化です。高付加価値化は日清をはじめとする日本メーカーが得意とするところです。日清は2017年に中国子会社を香港取引所に上場させており、本格的に中国市場を開拓しようとしています。そこで中国人の肥えた舌を唸らせる商品を投入できれば割高なデリバリーより即席ラーメンという流れになるかもしれません。

ラーメン市場は今後もグローバルレベルで拡大し続けると思われます。即席ラーメン市場の第2ステージがどうなるか、カップラーメンをすすりながら見ていきたいと思います。