世界のインスタント麺市場は第2ステージへ -中国を追いかけるインスタント麺「新興国」とは

【記事のポイント】

  • 世界のインスタント麺市場は過去最高を更新
    2020年は1,166億食(前年比+9.5%)を達成
  • インスタント麺市場は中国や韓国など東アジア諸国がけん引してきたが、ここ数年は「インド」を中心とするインスタント麺「新興国」が台頭
    ⇒ インスタント麺市場は第2ステージへ移行
  • それでも中国は一人当たり消費量の拡大余地があり、今後も成長の「のびしろ」が見込める。
    ⇒ 課題は外食ラーメンとの差別化
  • 第2ステージまでは量的拡大フェーズだが、第3ステージは「高付加価値化」がカギを握る。
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世界のインスタント麺市場

市場規模は過去最高を更新

日清食品の創業者、安藤百福氏が世界初のインスタント麺「チキンラーメン」を開発したのが1958年。インスタント麺は今や世界の人々の胃袋を満たすグローバル・フードに成長しています。

日清をはじめとする日本の製造メーカーも、だいぶ前から成長舞台をグローバル市場に移しています。海外では即席ラーメンというとカップ麺より安価に購入できる袋麺を指すことが多いので、海外ではまずは袋麺をベースに商品戦略を立てるようです。

ではインスタント麺のグローバル市場はどれだけの規模に成長しているのでしょうか。

世界ラーメン協会のデータで確認すると、世界のインスタント麺(カップ麺+袋麺)の消費量は2014年頃にいったん頭打ちした後、再び右肩上がりの成長を続けています。2019年は過去最高の1,064億食を達成、2020年は前年比9.5%増の1,166億食まで一気に上昇しました。

世界のインスタント麺市場の推移

世界のインスタント麺市場の推移

コロナ禍の巣ごもり需要だけではない

2020年の急増はコロナ禍で起きた世界的な「巣ごもり需要」がインスタント麺需要を一気に押し上げたのは事実でしょう。

下のグラフは2020年の日本のカップ麺支出額を前年と比較したものです。2月下旬から3月頭にかけての急増は2月27日に安倍首相が「全校休校」を要請したことを受けた時期です。もう一つの山は4月7日の緊急事態宣言前の駆け込み需要です。確かにこの時期は食品スーパーのインスタント麺売り場の棚が空の状態だったのを記憶しています。

日本のカップ麺支出額の日次推移

日本のカップ麺支出額の日次推移

2020年の急増は確かに巣ごもり需要が要因でした。しかしより重要な点は、

コロナ禍の前からすでにインスタント麺市場は上昇トレンドに入っている

ということなのです。

いったん頭打ちとなったグローバルなインスタント麺市場が急回復した理由は何なのか、確認していきましょう。

インスタント麺市場は第2ステージに突入

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市場を引っ張ってきたインスタント麺「先進国」

まずインスタント麺市場の消費量を国別に確認していきます。

想像できると思いますが、インスタント麺の消費量が最も多い国は中国です。中国の2020年のインスタント麺消費量は463億食と、世界のインスタント麺の約4割が中国で消費されています。中国に続いて、インドネシア(126億食)、ベトナム(70億食)、インド(67億食)、日本(59億食)となっています。

消費量では中国がダントツですが、インスタント麺がどれだけ好まれているかを表しているのが「一人当たり消費量」です。ダントツは韓国で一人当たり年間80食が消費されています。韓国の次は、ベトナム(72食)、ネパール・タイ(53食)、マレーシア(49食)日本(47食)、インドネシア(46食)です。ネパールが2位というのはやや意外な感じですが、同国ではおやつによく即席ラーメンを食べるそうです。消費量で最大の中国は年間32食と一人当たり消費量では韓国の半分以下という具合です。

アジアを中心とするこれらの国はインスタント麺「先進国」として市場を引っ張ってきました。

急拡大するインスタント麺「新興国」

インスタント麵市場がここ数年で再浮上している理由はインスタント麺「先進国」ではありません。消費量が2013年に1,057億食に達したところで頭打ちしたのは即席ラーメン先進国の消費量が鈍化したことによります。一人当たり消費量の高い韓国やベトナムはすでにインスタント麺がかなり浸透していますので、伸び率が鈍化するのは自然な流れと言えます。

インスタント麺「先進国」が成長の壁に直面する中、インスタント麺市場を再び押し上げているのがインスタント麺「新興国」の存在です。世界のインスタント麺市場はインスタント麺「新興国」によって第2ステージに突入している。これが今の姿です。

下のグラフは即席ラーメンの一人当たり消費量と伸び率を国別にプロットしたものです。赤色の国が一人当たり消費量が平均を上回るインスタント麺「先進国」です。先に見た韓国や中国、インドネシア、日本がここに入ります。ただ成長率でみると平均を上回る国は、ベトナム、ネパール、フィリピン、タイといった数国で、全体としてインスタント麺「先進国」は成長の壁に直面している様子が見て取れます。

これに対し、一人当たり消費量は平均を下回るがここ数年で消費量が急拡大している国。それが青色のインスタント麺「新興国」です。インド、カザフスタン、南アフリカをはじめ、フランスや米国など欧米国も入ってきます。一人当たり消費量がまだ低いため、インスタント麺のおいしさが認知されれば市場が一気に伸びる可能性を秘めています。日本への観光で日本のラーメンの素晴らしさを知り、自国でもラーメンを食べたいと思う人が増えているのかもしれません。

こうして世界のインスタント麺市場は第1ステージを引っ張ってきた東アジアを中心とする国々から、インドや南米、欧州などのインスタント麺「新興国」がけん引する第2ステージに入っているわけです。

インスタント麺市場の国別ポジション(一人当たり消費量と成長率)

インスタント麺市場の国別ポジション(一人当たり消費量と成長率)

第2ステージの主役は「インド」

インスタント麺「新興国」の主役は13億もの人口を擁する「インド」です。

インドの主食といえば、お米(インディカ米)や小麦で作るナンです。ラーメン文化はほとんどなかったインドですが、海外の食品メーカーがインドの消費者の口に合うインスタント麺を開発しながら徐々に受け入れられていったようです。

インドのインスタント麺の定番といえば「マギー(Maggi)」です。マギーはネスレが販売するインスタント麺(袋麺)で83年から発売されています。インドではインスタント麺のことをマギーと呼んでいるようです。

日本の日清も頑張っています。日清は早くからインドに注目しており、1988年にインドに進出しています。インドでラーメンを浸透させるのは大変な苦労だったようですが、マーケティング調査と商品開発を重ねることで事業も軌道に乗ってきました。インドのカップヌードルは全8種類、すべてスパイスを効かせたものです。私はまだ食べたことはないのですが、ブログやSNS投稿などをみると日本人の口にも合うようです。

こうした海外メーカーの努力に加え、近年は訪日インド観光客が日本のラーメンに舌鼓を打つ姿が多くみられ、インドにもラーメン文化がだいぶ根付いてきたようです。食の多様化はグローバル規模で進んでいることを実感します。

中国にはまだ「のびしろ」がある

世界のインスタント麺市場の今後を見通す上で一つ気になる国があります。ラーメン大国「中国」です。第1ステージを引っ張ってきた中国ですが、実はまだのびしろがあるかもしれないのです。

先のグラフをみても中国の一人当たり消費量は28食で韓国の半分以下、順位では上から10番目です。ラーメン大国で10位というのはまだまだ伸びしろがある証拠です。約14億という人口の持つ消費量を勘案すれば、一人当たり消費量を上げるだけでインスタント麺「新興国」と一緒に第2ステージを盛り上げる余力は十分あるのです。

ただ中国はラーメン大国であるがゆえにラーメンに対する舌も肥えています。

中国は外食文化ですので、おいしいラーメンが外で食べられます。そこに最近はUber Eatsなどのデリバリーサービスが浸透したことで、自宅で食するインスタント麺の需要がデリバリーに押される格好になっています。

デリバリーサービスにはない安さがインスタント麺の魅力ですが、それだけでは成熟段階に入った中国の消費市場で競争力を保つのは厳しいでしょう。中国のインスタント麺の最大手は「康师傅」という食品メーカーですが、商品のほとんどは100円以下という安さで外食ラーメンとは別モノという位置づけです。

中国でインスタント麺の一人当たり消費量を引き上げるには高付加価値化が不可欠です。

そこは日清をはじめとする日本メーカーが得意とするところです。日清は2017年に中国子会社を香港取引所に上場させており、本格的に中国市場を開拓しようとしています。そこで中国人の肥えた舌を唸らせる商品を投入できれば割高なデリバリーよりインスタント麺という流れが生まれるかもしれません。

インスタント麺市場は今後もグローバルレベルで拡大し続けるはずです。第2ステージはまだ量的拡大のフェーズですが、第3ステージは高付加価値化がキーワードになるでしょう。栄養・健康面への配慮、外食ラーメンやチルド麺等との差別化、ストーリー性の付加などが求められます。高付加価値なインスタント麺とはどのようなものか。ワクワクしながら待ちたいと思います。

参考記事:「チルド麺」のうまさに衝撃 - ラーメンチェーン店を脅かす存在に