【記事のポイント】
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「終わらないコンテンツ」に夢中になる人々
オワコンとは「終わったコンテンツ」のことを指しますが、今後は「終わらないコンテンツ」という意味のオワコンが消費の重要なキーワードになりそうです。
増加するロングランドラマ
「終わらないコンテンツ」を象徴するのがロングランドラマです。
ドラマには普通終わりがあるものですが、海外ドラマには10年以上続くロングランドラマが数多くあります。
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2000年以降に開始した10年以上続くドラマを取り上げてもこれだけ出てきます。
私も海外ドラマは結構観るほうです。ウォーキングデッドがシーズン11(21年8月放送予定)で最終シーズンになると聞いたときは、何とも言えず寂しい気持ちになりました。同じドラマを10年以上も見続けるとストーリーがどうとかいう次元を超えた何かが自分の中に生まれているのを感じます。
海外ドラマほどではありませんが、日本のドラマも負けていません。2000年にスタートした刑事ドラマ「相棒」は20年以上続いています。「連ドラ」の愛称で親しまれてきたNHKの連続テレビ小説は帯ドラマ形式ですが、観ている側は同じ世界観を共有しながら各ドラマを見続けているはずです。
宝塚劇場とソーシャルゲーム
宝塚劇場
終わらないコンテンツはドラマだけでありません。1914年の創設以来100年以上続く「宝塚劇場」は終わらないコンテンツそのものと言っていいでしょう。宝塚劇場のコンテンツは「タカラヅカ」という世界観です。演目はコンテンツの一部にすぎません。その世界観はファンと一緒に創り上げるものです。
「男役10年」と言われるように、宝塚ファンの多くはお気に入りの「男役」をスター候補生の黎明期から伴走しながら支え続けます。演劇という完成品を鑑賞して終わるのではありません。初めはぎこちなかった演技が演目を重ねるうちに男役の色気が身に付くようになる。宝塚ファンはプロセスをとても大切にしています。
未完成の状態から男役として完成品になり、卒業(退団)するまでの長期間伴走し続ける。まさに終わらないコンテンツです。
ソーシャルゲーム
ゲームも終わらないコンテンツ化が進んでいます。従来のゲームはあらかじめ設定されたゴールをクリアするものでした。しかし昨今のソーシャルゲームは運営側が新たな要素をどんどん追加してくるのでゴールがどんどん変わっていくようです。
終わりのないゲームを実現可能にしているのがAIです。AIがゲームの展開を学習し新たな要素を追加していくので、参加者からすると常に予期できない展開が待っており、ワクワク感が継続する仕組みになっています。
「終わらないコンテンツ」はなぜ人々を魅了するのか
新規顧客の獲得には既存顧客維持コストの5倍かかるとも言われています。ですので企業・制作サイドからみれば「終わらせない」ほうがメリットが大きいのは理解できるでしょう。
では顧客・ユーザー側はなぜ終わらないコンテンツに惹きつけられるのでしょう。
所有・使用よりプロセスに価値を見出す
時間が経つほど満足度が上昇
私たちは生活に必要なものは一通りそろった時代に生きています。「いつかはクラウン」と言われた50-60年代の消費とは「所有すること」でしたが、自家用車が普及するにつれてレンタカーやカーシェアリングが普及、消費の流れは「使用すること」に移っていきました。
そして現在、人々はモノを所有・使用することより「経験すること」に価値を見出すようになっています。プロセスの中に楽しみを見出す経験価値は時間が経てばたつほど満足度が高まっていく。結果として「終わらないコンテンツ化」していきます。
経験・体験するということは、その人の中の想いが積み重なって記憶に残るということです。それは村上春樹の小説の中で主人公が語る以下のセリフにも表れています。
「かたちあるものは、みんないつかは消えてしまう。でもある種の思いというものはいつまでもあとに残る」
村上春樹 「国境の南、太陽の西」より抜粋
「かたちあるもの」 ⇒ 所有・使用価値
「ある種の思い」 ⇒ 経験価値 ⇒ 終わらないコンテンツ
と整理できます。 所有・使用価値と経験価値の違いは時間と価値の関係性として表せます。下の図にあるように、「すでに出来上がった商品・サービス」を対象とする所有・使用価値は、商品を購入・使用した時点から満足度が低下しはじめます。これに対し思いが積み重なる経験価値の満足度は時間が経っても衰えることはありません。
価値と時間の関係性
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