スイーツ市場の王者「アイスクリーム」 -通年型「ハレの日デザート」として定着

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巣ごもり消費でも好調なアイス

ささやかな「ハレの日気分」

数あるスイーツの中で「息の長いブームが続いている」「家計のスイーツ支出額No1」の商品とは、

アイスクリームです。

スイーツオヤジを自認する私はコンビニに立ち寄ると必ずと言っていいほどアイスクリームを手に取ってしまう人間です。最近は健康のために少し控えるようにしていますが、それでもアイスクリームを見かけると脈拍が確実に上がります。

アイスクリーム人気はコロナ禍の巣ごもり生活でも健在のようです。下のグラフは家計のアイスクリーム支出額を2019年から2021年まで日次で比較したものです。巣ごもり消費が目立った2020年の春や猛暑となった夏場は前年を上回るペースで伸びているのがわかります。2021年に入ってもアイスクリーム支出額は前年を上回るペースで伸びています。

アイスクリームは家の中でも外でも場所を問わず好まれる商品ですが、コロナ禍ではもっぱら家の中でアイスクリームを食べる人が増えました。サーティーワンなどのテイクアウト需要は好調だったようです。

巣ごもり生活で気分が落ち込む中、アイスクリームはささやかな「ハレの日気分」を味わうデザートになっていたのではないでしょうか。

アイスクリームの日次支出額の推移

アイスクリームの日次支出額の推移

明暗分かれるコロナ禍のスイーツ

アイスクリーム以外のスイーツはどうだったのでしょうか。

下の表にあるように、2020年と2019年の月間支出額(平均値)を比べると、スイーツ13品目の中で前年を上回ったのは6品目、下回ったのは7品目と品目によって明暗が分かれています。

支出額が減少したのは、まんじゅうやようかんなど和菓子関係。支出が増加したのは、スナック菓子やチョコレート、アイスクリームなど洋菓子関係。和菓子と洋菓子で明暗が分かれた格好です。 スナック菓子、チョコレート、アイスクリームは巣ごもり3大スイーツのようになっています。

家計の月次スイーツ支出額

2020年2019年前年比
ようかん661円674円-1.9%
まんじゅう900円1,092円-17.6%
カステラ711円810円-12.2%
ケーキ7,151円6,994円 2.2%
ゼリー2,001円2,292円-12.7%
プリン1,639円1,587円 3.3%
せんべい5,682円5,869円 -3.2%
ビスケット3,652円4,121円-11.4%
スナック菓子5,293円4,851円 9.1%
キャンデー2,285円2,338円 -2.3%
チョコレート6,860円6,783円 0.3%
チョコレート菓子1,979円1,726円 14.7%
アイスクリーム・シャーベット10,113円9,701円 4.2%
(出所)総務省「家計調査」

アイスはスイーツ市場の王者

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ツートップは「アイスクリーム」と「チョコ」

私のようなオヤジ世代がスイーツと聞いて思い浮かべるのは「ケーキ」です。しかしケーキはもはやスイーツの王者ではなくなっています。

下のグラフは家計のスイーツ支出額を時系列でみたものですが、ケーキの支出額は2009年にアイスクリームに抜かれています。その後、2016年にはチョコレート(チョコレート菓子を含む)にも抜かれているのです。最近の不二家の大量閉店には、こうしたケーキ市場の低迷も関係しているのかもしれません。不二家については別の記事で取り上げています。

今のスイーツ市場の王者はアイスクリーム。次いでチョコレート、ケーキは3番手という構図になっています。

日本アイスクリーム協会によると、アイスクリーム市場(販売金額)は2010年から7年連続で増加し、2019年度は若干低下した後、2020年は巣ごもり需要を追い風に5,197億円(前年比100.9%)という巨大なマーケットに成長しています。

アイス、チョコ、ケーキの支出額の推移

アイス、チョコ、ケーキの支出額の推移

「アイスクリーム」強さの秘密

冬アイスで通年型デザートへ

スイーツの王者となったアイスクリーム。その強さはどこあるのでしょうか。

一つはアイスクリームが夏だけのデザートではなくなったことです。「冬アイス」が一時流行語になりましたが、アイスクリームはもはや夏のデザートではなくケーキや和菓子と同じ「通年型デザート」になりつつあります。

夏のアイスの利点は「暑さをしのぐ」ことですが、冬アイスは「息抜き」や「癒し」が消費者を惹きつけます。アイスメーカーとしては、仮に夏場の売上が伸びなくても冬アイスで売上の落ち込みをカバーできるようになりました。

下の図は気温とアイスクリーム支出の関係を日次でみたものです。当然ですが、気温が高いほどアイスクリームの支出額が増える傾向がわかります。

興味深いのは、2007年-2012年と2013年-2019年の比較です。ここ数年は気温が高い日も低い日もアイスの支出額は増加傾向にあるのがわかります。特に顕著な増加をみせているのは気温が5度未満の冬場です。「冬アイス」の存在がここからも確認できます。

気温とアイスクリーム支出額の関係

気温とアイスクリーム支出額の関係
アイス好き1位は金沢でなく青森?

地域別のアイス消費量をみても、アイスが通年型デザートになってきたことを確認できます。日本では気温の高い南側より気温の低い北側のアイス消費量が多いという特徴があります。

アイスクリーム・シャーベットの1世帯当たり年間消費量(2016~2019年平均)を都道府県所在市別にみると、「金沢市」が1位、2位「浜松市」と主に北側の地域で多く消費されています。ちなみに那覇市は最下位です。

ここで一つ注意が必要なのは、アイス消費量のランキングがそのままアイス好きの順位を表すとは限らないということです。都道府県ランキングでよく使われるのは消費量ですが、アイスが好きかどうかの指標は「支出全体に占める割合」でみるべきです。

支出全体に占める割合でみると、1位は「青森市」、2位は「福島市」と東北が上位となり、金沢市は13位に低下します。私は東北出身ですが、冬でもコタツに入りながらアイスを食べていましたので、この結果にそれほど違和感はありません。

地域別に見たアイスクリーム・シャーベットの消費ランキング

地域別に見たアイスクリーム・シャーベットの消費ランキング

「子供のおやつ」から「大人のデザート」まで

アイスクリームの強さのもう一つの理由は、アイスクリームが年代を選ばないスイーツになったことです。

私が子供のころのアイスは、学校帰りに駄菓子屋で友達と立ち食いをしたり、母親がスーパーで買ってきてくれる「子供のおやつ」でした。

しかしここ数年は私のように会社帰りにコンビニで購入したり、飲んだ後のデザートにするなど「大人のデザート」として広がりをみせています。アイスバー「PARM(パルム)」は昨年30~60代をターゲットとした「キャラメル&チョコレート味」を販売しました。メーカー各社は大人向けの高級感ある商品を投入しています。

シニアのデザートは和菓子、というのはもはや過去の話になりつつあります。家計調査などで確認してもシニア世代の和菓子への支出は大きく減少している中、チョコやアイスの支出は急増しています。

和菓子からアイスへのシフト化は、今のシニア世代が育った環境も関係していると思われます。戦中生まれの世代と違い、団塊世代を中心とする今のシニア世代は子供のころからアイスを食べて育ってきた世代です。今のシニア世代にとってアイスクリームが身近なスイーツなのでしょう。

日本のアイスブームはまだ終わらない

これだけアイスクリーム・ブームが長く続けば、そろそろ飽和感がでてきてもおかしくないところですが、日本のアイスクリーム市場はまだ拡大余地が残っています。

日本アイスクリーム協会の資料では、アイスクリームの一人当たり消費量を国別に比較すると日本はまだ17位です(2016年)。1位のオーストラリアの一人当たり消費量は19.3リットルです。日本は6.5リットルですので約3倍の開きがあります。

アイスクリームの購入先も重要です。オーストラリアのアイスクリームの約3割は外食先で消費されています。オーストラリアではケーキを頼んでもアイスクリームが当たり前のように添えられるという話を聞きます。

日本ではアイスクリーム消費の9割がコンビニなど小売店経由です。レストランのデザート・メニューにもアイスクリームはありますが、ケーキのようなバリュエーションはないように思えます。

外食店がアイスクリームに力を入れるようになれば、日本のアイスクリーム市場は質量ともに多様でダイナミックな市場に変化する可能性は十分あります。日本のアイスブームはまだ終わりそうもありません。