アイスブームはまだ終わらない -スイーツ市場はチョコとアイスの2強時代へ

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コロナ禍でも好調なアイス

ささやかな「ハレの日気分」

スイーツ市場の中で息の長いブームが続いているのがアイスクリームです。スイーツオヤジを自認する私はコンビニに立ち寄ると必ずと言っていいほどアイスクリームを手に取ってしまう人間です(妻には内緒)。

アイス人気はコロナ禍でも健在のようです。下のグラフは2020年と2019年の家計のアイスクリーム支出の動きを日次で比較したものです。巣ごもり消費が目立った春や猛暑となった夏場は前年を上回るペースで伸びているのがわかります。

4月から5月にかけての緊急事態宣言中は外でアイスクリームを楽しむ機会が減りましたが、サーティワンなどのテイクアウト需要は好調だったようです。巣ごもり生活で気分が落ち込む中、アイスクリームはささやかな「ハレの日気分」を味わうアイテムになっていたのではないでしょうか。

アイスクリーム・シャーベットの日次支出額の推移

アイスクリーム・シャーベットの日次支出額の推移

明暗分かれるコロナ禍のスイーツ

アイス以外のスイーツはどうだったのでしょうか。

3-10月の平均でみると、スイーツ13品目の中で前年を上回ったのは6品目、下回ったのは7品目と品目によって明暗が分かれています。

まんじゅうやようかんなど和菓子関係の支出が大きくマイナスとなり、スナック菓子やチョコレート、アイスクリームは好調です。 このスナック菓子、チョコレート、アイスクリームは巣ごもり3大スイーツのようになっています。

「コロナ太り」という言葉が流行っているように、一日家を出ずにいると口がさみしくなってついスナックやチョコ、アイスに手が出てしまいます。皆さんも心当たりあるのではないでしょうか。私もコロナ禍で間食が多くなり、しっかり「コロナ太り」しました。

アイスはスイーツ市場の王者

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2トップはアイスとチョコ

アイスクリーム人気はコロナ前から続く現象です。アイスクリーム市場は2010年から7年連続で増加し、2019年度は若干低下したものの5,151億円という巨大なマーケットに成長しています。

スイーツ市場の中でもアイスクリームの成長は突出しています。家計のスイーツ支出の中で最も大きいのがアイスクリームで、チョコレートがこれに続きます。

私のようなオヤジ世代がスイーツと聞いて思い浮かべるのは「ケーキ」ですが、ケーキはもはや市場規模でみてスイーツの王者とは言えなくなりました。

下の図にあるように、ケーキの支出額は2009年にアイスクリームに抜かれ、2016年にチョコに抜かれます。最近の不二家の大量閉店には、こうしたケーキ市場の低迷も関係しているのかもしれません。不二家については別の投稿で取り上げています。

アイス、チョコ、ケーキの支出額の推移

アイス、チョコ、ケーキの支出額の推移

アイスクリームの強さの秘密

冬アイスで通年型デザートへ

スイーツ市場を独走するアイスクリームの強さはどこあるのでしょうか。

一つはアイスクリームが夏だけのデザートではなくなったことです。「冬アイス」が一時流行語になりましたが、アイスクリームはもはや夏のデザートではなくケーキや和菓子と同じ「通年型デザート」になりつつあります。

夏のアイスの利点は「暑さをしのぐ」ことですが、冬アイスは「息抜き」や「癒し」が消費者を惹きつけます。アイスメーカーとしては、仮に夏場の売上が伸びなくても冬アイスで売上の落ち込みをカバーできるようになりました。

下の図は気温とアイスクリーム支出の関係を日次でみたものです。当然ですが、気温が高いほどアイスクリームの支出額が増える傾向がわかります。

興味深いのは、2007年-2012年と2013年-2019年の比較です。ここ数年は気温が高い日も低い日もアイスの支出額は増加傾向にあるのがわかります。特に顕著な増加をみせているのは気温が5度未満の冬場です。「冬アイス」の存在がここからも確認できます。

気温とアイスクリーム支出額の関係

気温とアイスクリーム支出額の関係
アイス好き1位は金沢でなく青森?

地域別のアイス消費量をみても、アイスが通年型デザートになってきたことを確認できます。日本では気温の高い南側より気温の低い北側のアイス消費量が多いという特徴があります。

アイスクリーム・シャーベットの1世帯当たり年間消費量(2016~2019年平均)を都道府県所在市別にみると、「金沢市」が1位、2位「浜松市」と主に北側の地域で多く消費されています。ちなみに那覇市は最下位です。

ここで一つ注意が必要なのは、アイス消費量のランキングがそのままアイス好きの順位を表すとは限らないということです。都道府県ランキングでよく使われるのは消費量ですが、アイスが好きかどうかの指標は「支出全体に占める割合」でみるべきです。

支出全体に占める割合でみると、1位は「青森市」、2位は「福島市」と東北が上位となり、金沢市は13位に低下します。私は東北出身ですが、冬でもコタツに入りながらアイスを食べていましたので、この結果にそれほど違和感はありません。

地域別に見たアイスクリーム・シャーベットの消費ランキング

地域別に見たアイスクリーム・シャーベットの消費ランキング

「子供のおやつ」から「大人のデザート」まで

アイスクリームの強さのもう一つの理由は、アイスクリームが年代を選ばないスイーツになったことです。

私が子供のころのアイスは、学校帰りに駄菓子屋で友達と立ち食いをしたり、母親がスーパーで買ってきてくれる「子供のおやつ」でした。

しかしここ数年は私のように会社帰りにコンビニで購入したり、飲んだ後のデザートにするなど「大人のデザート」として広がりをみせています。アイスバー「PARM(パルム)」は昨年30~60代をターゲットとした「キャラメル&チョコレート味」を販売しました。メーカー各社は大人向けの高級感ある商品を投入しています。

シニアのデザートは和菓子、というのはもはや過去の話になりつつあります。家計調査などで確認してもシニア世代の和菓子への支出は大きく減少している中、チョコやアイスの支出は急増しています。

和菓子からアイスへのシフト化は、今のシニア世代が育った環境も関係していると思われます。戦中生まれの世代と違い、団塊世代を中心とする今のシニア世代は子供のころからアイスを食べて育ってきた世代です。今のシニア世代にとってアイスクリームが身近なスイーツなのでしょう。

日本のアイスブームはまだ終わらない

これだけアイスクリーム・ブームが長く続けば、そろそろ飽和感がでてきてもおかしくないところですが、日本のアイスクリーム市場はまだ拡大余地が残っています。

日本アイスクリーム協会の資料では、アイスクリームの一人当たり消費量を国別に比較すると日本はまだ17位です(2016年)。1位のオーストラリアの一人当たり消費量は19.3リットルです。日本は6.5リットルですので約3倍の開きがあります。

アイスクリームの購入先も重要です。オーストラリアのアイスクリームの約3割は外食先で消費されています。オーストラリアではケーキを頼んでもアイスクリームが当たり前のように添えらるという話を聞きます。

日本ではアイスクリーム消費の9割がコンビニなど小売店経由です。レストランのデザート・メニューにもアイスクリームはありますが、ケーキのようなバリュエーションはないように思えます。

外食店がアイスクリームに力を入れるようになれば、日本のアイスクリーム市場は質量ともに多様でダイナミックな市場に変化する可能性は十分あります。日本のアイスブームはまだ終わりそうもありません。