ハイカカオチョコレート ー健康志向で季節を問わない商品へ

菓子市場No1の市場規模を誇るチョコレート。チョコブームをけん引するのがカカオ含有量70%以上の「ハイカカオチョコレート」です。ハイカカオチョコブームは一過性で追わる現象なのか、それともコーヒーブームのような本物のブームなのか。統計データをみながら考察します。
広告

好調なチョコレート市場

チョコの市場規模は菓子市場でトップ

みなさんにとってチョコレートとはどのような存在でしょう。コーヒーのお供、ワインのお供、ウォーキングの休憩時のお供、煮詰まって頭が回らなくなったときのお供、妻と喧嘩したときのクールダウンのお供、などなど。私にとってチョコレートは、生活のあらゆる場面で登場する名脇役的存在といったところです。

全日本菓子協会の調査によると、2020年のチョコレートの市場規模 (小売金額) は5,470億円。和生菓子3,960円、洋生菓子3,740億円と比べても断トツのトップです。

菓子市場の市場規模

菓子市場の市場規模

けん引役は「ハイカカオチョコレート」

チョコレートを菓子市場No1の地位に押し上げたのは、カカオ含有量70%以上の「ハイカカオ・チョコレート」です。カカオ豆に含まれるカカオポリフェノールの美容・健康効果に注目が集まったことで人気に火が付きました。

ハイカカオチョコのほとんどはカカオ含有量に応じて売られています。私も毎日ハイカカオチョコを食べてます。はじめにカカオ含有量88%を試したら食べづらかったのでしばらく70%にしていましたが、その後88%に再挑戦したところ以前のような食べづらさは感じなくなり、今は88%がメインです。舌がカカオ慣れしたのかもしれません。

ハイカカオチョコレート商品

カレ・ド・ショコラ

さて、急成長を続けるハイカカオチョコですが、チョコ市場をけん引するまでの道程はそう簡単ではなかったようです。先のグラフでチョコレートの市場規模をみるとわかりますが、チョコレート市場が急増するのは2010年以降になってからです。ハイカカオチョコの走り的存在の明治「チョコレート効果」は98年発売、森永「カレ・ド・ショコラ」は2003年発売ですので、ブームとして火が付くまで10年を要しています。さらにスーパーやコンビニで定番商品になったのはここ数年のこと。つまりハイカカオチョコが消費者に浸透するまで20年以上もかかったわけです。なぜでしょうか。

  • チョコレート=甘い=太る=健康に悪い
  • 食べすぎると「ニキビになる」「鼻血が出る」

ブームまで苦節20年もかかったのは、チョコレートに対するこうしたイメージが背景にあることが指摘されています。ハイカカオチョコブームはメーカーさんの並々ならぬ努力が結実したものなのです。本当に頭が下がります。

ハイカカオチョコ人気は一過性の現象ではない

ハイカカオチョコレートがけん引する今のチョコブーム。今後も長く続くのでしょうか、それとも一過性で終わってしまうのでしょうか。私は今のチョコブームは単なる「流行りもの」ではなく本物のブームだと感じています。理由を見ていきましょう。

広告

【理由1】中高年層に刺さるチョコの健康効果

言うまでもなくハイカカオチョコの最大のウリは「健康効果」。カカオポリフェノールの効果と言えば「血圧低下」「動脈硬化の予防」「脳の活性化」といったところでしょうか。これらはすべて中高年齢層の健康意識をくすぐりそうな効果です。かくいう私もチョコの健康効果にくすぐられまくり、近所のコンビ二に買いに走った一人です。

当初は美容やダイエットに関心のある若い層がハイカカオチョコに注目していたようですが、カカオポリフェノールの効果が浸透するにつれ、健康面で不安を抱える中高年層の関心を集めるようになりました。下のグラフはチョコブームが始まった2010年以降のチョコレート支出額を年齢別に追ったものです。50歳以上の年齢層の支出額が伸びているのがわかります。特に60代の支出額はこの10年で2倍以上も増えているのです。

年齢別にみたチョコ支出額-中高年層がけん引

年齢別にみたチョコ支出額の推移

チョコレート効果への期待値はコロナ禍でさらに高まっています。巣ごもり生活による運動不足とストレス等で中高年を中心とする健康被害が増えています。美容やダイエットを目的とした健康意識とは違う「切羽詰まった」健康意識なのです。魚の健康効果が再評価されるなど、食生活のあらゆる場面で切羽詰まった健康意識の片鱗が見られます。

【理由2】美味しさが格段にアップ

メディア等で取り上げられる健康食品の殆どは時間の経過とともに売れ行きが落ちると言われます。「健康に起因する食品ブームは長続きしない」とは食品業界からよく聞こえてくる嘆きの声です。健康効果をうたった食品の多くが失敗に終わる理由は何でしょう。

単純に、美味しくないから

ではないでしょうか。いくら健康に良いと言われても口に入れるものである限り、消費者としては美味しさを求めるのは当然です。はじめは我慢して食べていても美味しくないものを食べ続けるのは苦痛でしかありません 。

ハイカカオチョコが本物のブームと期待できるのは、健康効果に「食品としての美味しさ」がプラスされているからです。ハイカカオチョコの美味しさは食品メーカーの努力の賜物です。特に最近のハイカカオチョコはどの商品も香りとうまみがアップしているように感じます。食品メーカーが20年以上もの年月をかけてハイカカオならではの香りや風味を楽しめる商品を開発してきました。結果として「ハイカカオチョコレート=苦くて食べづらい」というマイナスイメージが払拭されていったのです。

【理由3】「健康チョコ習慣」で季節を問わないスイーツへ

チョコレートは冬場に売れる季節性商品

このように言われてきたチョコレートですが、「健康効果×美味しさ」で新境地を拓くハイカカオチョコはチョコの常識・定説を良い意味で覆しています。

たしかにチョコレートは気温が低くなるほど売れる商品です。チョコがもっとも売れるバレンタインも冬場です。下のグラフは気温とチョコレートの支出額の関係をプロットしたものです。気温が下がるほどチョコの支出額が大きくなる傾向が確認できるでしょう。

しかしです。このグラフからは興味深い変化がみてとれます。07-12年と13-20年で期間を分けると、気温とチョコ支出額のかたまりが全体に右側にシフトしているのがわかるでしょう。気温が低い時期に伸びているのは当然ですが、25度を超す夏場でもチョコ支出額が伸びているのです。夏チョコ現象がデータからも確認できます。

チョコレート支出額と気温の関係性

チョコレート支出額と気温の関係性
チョコは夏場でも人気がある

先のグラフはチョコレートが年中愛されるスイーツになりつつあることを示すものです。「健康チョコ習慣」とは明治が健康に良いチョコを毎日摂ってもらうよう付けたキャンペーン文句ですが、まさにねらい通りの展開になっています。最近は冷やしておいしい夏限定の「夏チョコ」がどんどん投入されています。夏場のチョコは今後も伸びる可能性大でしょう。

【理由4】相性抜群の「チョコ×コーヒー」

今のチョコブームが本物である理由の4つめは強力なパートナーの存在です。そのパートナーとは「コーヒー」です。言うまでもなくコーヒーとチョコレートは相性抜群。私もコーヒーを飲むときは必ずと言っていいほどハイカカオチョコを食べています。

重要なのはコーヒー自体が本物のブームだということです。「チョコ×コーヒー」とはつまり、2つのブームを持つ食品が相乗効果を生み出すとんでもない組み合わせなのです。コーヒーブームという強力な追い風を受けるチョコブームが本物でないわけがないのです。

コーヒーとチョコは味の相性もさることながら重要な共通点があります。豆の持つストーリー性です。現在、コーヒーブームは厳選された豆と生産地のストーリーをお店で味わうサードウェーブから、自宅で焙煎して自宅で丸ごとストーリーを味わうフォースウェーブコーヒーの流れが来ています。消費者はコーヒー豆の持つストーリー性に惹きつけられているわけです。

チョコレートの原料であるカカオ豆がどのような畑で作られ、どのようなプロセスを辿ってチョコレートになってきたのか。生産プロセスの光景そのものがストーリーとなって商品価値を高めるはずです。こうしたストーリー性は他のスイーツにはないチョコレートだけが持つ強みだと言えます。

カカオ豆はまだコーヒー豆のような豊かなストーリーを持つには至ってません。しかしハイカカオチョコの人気とともにカカオ豆に関心を持つ消費者は確実に増えています。ショコラティエ(Chocolatier)と呼ばれるチョコレートの専門職人が日本でも増えているようですので、今後はこうした専門職人がチョコストーリーの伝道師となってストーリー価値を高めていくことが期待できます。

まとめ

ここまでハイカカオチョコレートの魅力と潜在性について以下の点を中心にみてきました。ハイカカオチョコレートはがけん引する今のチョコブームは一過性の現象ではないことがわかります。

  1. 高まる中高年層の健康意識
  2. 美味しさが格段にアップ
  3. 季節を問わない通年スイーツ
  4. コーヒー豆に共通するストーリー性の高さ

今後、チョコレート市場がさらに進化する上で重要なカギとなるのが4つ目の「ストーリー性の高さをどう引き出せるか」にあるような気がしています。市場が発展するには多様な価値を持った商品群が不可欠だからです。チョコ市場は1個30円の「ブラックサンダー」のような手軽な商品や「チョコパイ」のようなチョコ菓子まで多種様々な商品がそろっています。飽和化しつつあるかにみえたチョコレート市場ですが、そこに新風を吹き込んだのがハイカカオチョコレートです。

健康効果とストーリー性という従来のスイーツという枠に収まらないハイカカオチョコレート。次はどんな商品が出てくるのか楽しみでなりません。

【補記】チョコ人口とアイス人口、どっちが多い?

お菓子のジャンルではありませんが、チョコレートと比較する上で欠かせない商品の一つがアイスクリームです。日本アイスクリーム協会の調査によると、2020年度のアイスクリームの市場規模は5,197億円(販売金額)でチョコレートと同じ5千億円台に乗せています。

スイーツ市場のツートップを走るチョコとアイス。世帯当たりの月次支出額でみると、2021年はチョコレート8,785円、アイスクリーム10,113円です。市場規模ではチョコ>アイス、世帯当たり支出ではチョコ<アイス。この逆転現象はどう理解したらいいのでしょう。チョコの市場規模を分解すると、

チョコの市場規模=(世帯当たりチョコ支出額)×(チョコを食べる世帯数)

となります。世帯当たり支出額はアイスが大きいのに市場規模ではチョコが大きい。これは「チョコを食べる世帯数」>「アイスを食べる世帯数」ということです。上記式で単純計算すると、

  • チョコ人口6,200万世帯
  • アイス人口5,100万世帯

となり、チョコ人口はアイス人口より1,000万世帯も多いという結果になります。結構な差だと思いませんか。アイスクリームは広く親しまれているスイーツです。しかしチョコはそれ以上に多くの人が口にする大衆スイーツなのです。