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人をつなぐプロ「コミュニティナース」-孤独問題の新たな切り札

深刻化する高齢者の孤独問題。地域コミュニティの機能が低下し、自治体のサポートにも限界が見える今、その解決策として注目されているのが「コミュニティナース」という新しい存在です。コミュニティナースは高齢者の孤独問題を解決する新たな“切り札”となるのでしょうか。

なぜ今、コミュニティナースが求められているのか?

かつて、日本の地域社会には「向こう三軒両隣」という言葉があったように、近所同士で助け合う「共助」の精神がありました。しかし現在では、近所付き合いも減り、自分の畑で取れた野菜を近所の人におすそ分けする光景もあまりみなくなりました。

自治体による「公助」も厳しい状況です。財政難や人材不足により、地域の高齢者一人ひとりの細かなニーズにまで手が届かない状況が続いています。

共助も公助も期待できない──。そこで期待が寄せられているのが地域に根差した「企業の力」です。先頭を走っているのが、相互扶助関係のビジネス化に取り組む株式会社CNC(コミュニティナース・カンパニー)という会社です。最近はCNCのように、地域をベースに社会的価値と企業価値の両方を目指す企業が目立つようになりました。

「コミュニティナース」とは?:住民同士をつなぐプロ

コミュニティナースは「住民同士をつなぐプロ」です。そのモットーは、「地域の人と楽しみをつくり、心と体の安心を提供する」こと。

看護師資格を持つメンバーも多いですが、資格の有無に関わらず「人と人をつなぐプロ」として活動します。全国に1,100人ほどおり、たった5人で住民2,000人に接しています。「スーパーに行くと全員知り合い」と言われるほど、コミュニティナースは地域に深く溶け込んでいます。

コミュニティナースのフィールドは病院ではなく「まち」です。「まちで暮らしている」段階でケアができれば、未然に病気や介護のリスクを防ぐことができます。

彼らが地域住民と顔の見える関係を築くことで、育児や介護の負担が軽減され、孤立が解消される──。結果として住民同士のつながりが深まり、「互いに助け合うコミュニティ」を取り戻すことにつながるわけです。

郵便局が「まちの保健室」に?

「ついで」に健康チェック

コミュニティナースの活動は、看護や育児相談に限定されません。目的はあくまで「住民同士をつなぐこと」です。現に、ガス会社のメーターチェック担当者に同行したり、おにぎり店を切り盛りしたりと、住民と「自然に出会える場」を積極的に作っています。

その好例が、島根県雲南市の三刀屋郵便局の取り組みです。同郵便局では、局内のコミュニティルームを「まちの保健室」として開放し、住民の健康相談の場として活用しています。そこではコミュニティナース(保健師)が住民の骨密度や血圧等を測定し、健康相談にも乗っています。

普段、高齢者は郵便局で年金の確認をしたりお金を引き出したりします。ただ用事を済ませて帰るだけではなく、ついでに健康相談を受けられ、住民や局員とも話ができる──。日常の楽しみが一つ増えることになります。

趣味で誰かの役に立つ

同局のコミュニティルームには住民の方が作ったクラフト作品や書道などの展示の場も用意されています。高齢者が趣味の刺し子を披露し、刺し子を習いたい住民にレクチャーするなど、趣味を通じた交流の場となっています。

この活動の真の価値は、高齢者が「助けられる側」から「誰かを助ける側」へ回れる点にあります。自分の趣味や得意なことを通じて他者と交流し、誰かの役に立つ。この体験は自尊心を満たし、孤独感を癒やす大きな力となります。ハンナ・アーレントの言葉を借りると、自分の手で何かを創造する「仕事」が他者とつながる「活動」を生み、人間らしさを取り戻すことになります。

コミュニティナースを地域に広げるには:3つのステップ

孤独問題の解決策として期待されるコミュニティナース。では今後、この取り組みをどのように地域全体へ広げ、定着させていけばよいのでしょうか。

1.「生活動線」にコミュニティナースを配置する

コミュニティナースは「住民との自然な出会い」を重視します。特別なイベントを開催するのではなく、住民が日常的に利用する「生活動線」の中にコミュニティナースがいれば、そこが自然な出会いの場となります。

具体的には、以下のような場所との連携が有効です。

  • 金融機関の窓口

資産運用や生活のやりくりに不安を感じているが、金融機関の窓口に相談するのは躊躇してしまう──。窓口に顔見知りのコミュニティナースがいれば、不安を抱えた高齢者を資産運用のプロへとスムーズにつなげることができます。

  • スーパーやコンビニの売り場:

高齢者の多くがほぼ毎日利用するであろうスーパーやコンビニ。かつてのスーパーの売り場では、顧客と店員が世間話をする姿があったが、近頃はセルフレジの導入などでこうした光景を見なくなりました。売り場にコミュニティナースがいれば、栄養指導などの健康相談に加え、何気ない会話が生まれる「憩いの場」としての機能をスーパーに復活させることができます。

生活動線上にコミュニティナース

生活動線上にコミュニティナース
筆者作成

2.住民自身がコミュニティナースになる

コミュニティナースが行っていることは何も特別なことではありません。「地域の人と楽しみをつくり、心と体の安心を提供する」──以前なら住民ひとり一人が行っていたことです。それが消費社会の情報の渦に巻き込まれることで、人の顔よりテレビやスマホの画面をみる機会が多くなった。こうして地域コミュニティの糸が切れてしまったのが今の姿です。

コミュニティナースの役割は、「切れてしまった地域コミュニティの糸を再接続すること」にあります。ただし、いつまでもコミュニティナースの力を借りているわけにはいきません。つなぐプロの力を借りた後は、住民自身がコミュニティナースのようになり、地域コミュニティの糸を強くしていく必要があります。

畑で取れた野菜を近所の高齢者におすそ分けしたり、スーパーや飲食店の店員は積極的に高齢者に話しかける──。こうした住民自身による主体的な参加によって、孤独問題は少しずつ解決に向かっていくはずです。

3.「若者の力」を引き出す

今後の地域活性化において期待したいのが、若者の積極活用です。Z世代と言われる今の若者は、つながりを大切にするマインドを強く持っています。地域移住を希望する若者、カフェや書店を立ち上げる若者が強く意識するのは地域とのつながりです。

若者たちがコミュニティナースのような「つなぎ役」となることで、従来の高齢者層だけでなく、多世代が混ざり合う新しいコミュニティが生まれ、孤独問題など地域の課題を解決する──割と期待できるシナリオではないかと感じています。

【まとめ】コミュニティナースが実現する「助け合いの循環」

コミュニティナースの活動は、単なる健康管理の枠を超え、「地域というコミュニティを再構築するプロジェクト」です。

  • 孤独問題の「新たな切り札」──公助・共助の機能が低下する現代において、コミュニティナースは企業と地域の力をつなぐ架け橋。「病気になってから治す」のではなく「まちで暮らす段階から健康と安心を届ける」ことで、未然に孤立を防ぐ。
  • 「生活動線」への溶け込み──郵便局やスーパーなど、住民が日常的に利用する場所にナースを配置し、自然な形で「出会い」を創出する。特別なイベントを待つ必要はなく、日々の買いものや手続きのついでに、心と体のケアを受けられる環境を作ることが普及の鍵。
  • 目指すは「住民全員がケアし合う」未来──ゴールは住民自身が「誰かを助ける側」に回り、互いに支え合う関係性を取り戻すこと。若者の積極的な参画も含め、ケアの輪が地域全体に広がることで、持続可能な「つながりのある社会」が実現。

このように、コミュニティナースとは、「誰かの役に立つ喜び」と「人とのつながり」を地域に取り戻す触媒です。この仕組みが普及することで、誰もが孤独を感じず、活き活きと暮らせるまちづくりが加速していくでしょう。


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