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猛暑で落ち込む消費-体温超えでアイスクリームとスポーツドリンク支出が減少

高まる「暑すぎる夏」リスク

過去最高の気温

「気温が上昇すると個人消費が増加する」と言われています。温かくなると気分がよくなって活動量が増えるからです。もっとも気温が急上昇する猛暑では話は別です。心地よいどころか不快になって外出を控えるようになる──暑すぎる夏は消費にマイナスになります。

「暑すぎる夏」リスクは年々増加しています。東京都の7-9月の最高気温の平均は23年に1875年の観測開始以来最高に達し、24年はさらに更新する見込みです(下図)。暑すぎる夏が消費にもたらすリスクはもはや無視できないものになっています。

最高気温の推移(東京都:7-9月平均)

最高気温の推移(東京都:7-9月平均)
(出所)気象庁

「体温超え」でアイスクリーム支出も減少

「気温が上昇すれば消費が増えるが、上がりすぎると消費は減る」──これを夏の定番商品アイスクリームの支出データで確認してみましょう。アイスクリーム(シャーベット含む)のデータは家計調査(総務省)の日別消費支出、気温のデータは東京都の最高気温を用います。

結果は下のグラフのように、気温が上がるほどアイスクリームの消費は伸びる関係が確認できます。冬アイスがブームになっているとはいえ、気温が上昇するほどアイスは売れるという関係は変わりません。

一般にアイスクリームは気温が20℃を超えたあたりから美味しく感じられ、もっとも美味しいと感じられる気温は30℃くらいと言われています(アイスクリーム協会調べ)。30度を超えるとアイスクリームはあまり売れなくなり、売れ筋はかき氷などシャーベット系にシフトするそうです。家計調査のアイスクリームのデータにはシャーベットも含まれており、30℃あたりからの上昇はシャーベットがけん引しているのでしょう。

注目すべきは35°℃を超えたエリアです。グラフの黒い線は支出と気温の関係を回帰曲線(多項式近似)で表したものですが、36℃あたりをピークに明らかに支出が減少に転じているのがわかります。体温を超えるほどの気温になると外出が控えられシャーベットも買いに行けなくなるということです。

アイスクリーム以上にこの傾向が顕著に出ているのがスポーツドリンクの支出です。近くにコンビニがあれば体温超えの猛暑でもアイスクリームを買いに行く人もいるでしょう。しかし猛暑ではさすがにスポーツどころではありませんので、スポーツドリンクの支出が減少するのは当然です。

アイスクリーム支出と最高気温の関係

アイスクリーム支出と最高気温の関係
(注)データ期間:2007-2024年
(出所)気象庁、総務省「家計調査」

スポーツドリンク支出と最高気温の関係

スポーツドリンク支出と最高気温の関係
(注)データ期間:2015-2024年
(出所)気象庁、総務省「家計調査」

猛暑下ではすべての消費が落ち込む

体温を超えると消費にブレーキがかかる──この傾向は消費支出全体でみてもはっきり出ています(下図)。アイスクリームやスポーツドリンクに限らず、体温超えの猛暑ではほぼすべての消費が落ちるということです。

猛暑による生活習慣への影響をみると、圧倒的に多いのが、「外出頻度が減った」(66.8%)、「運動の回数が減った」(39.7%)、「人と会う機会が減った」(33.4%)となっています(オムロンヘルスケア調査)。「外に出ない」「人と会わない」となると、消費にブレーキがかかるのは当然といえます。

消費支出と最高気温の関係

消費支出と最高気温の関係
(注)データ期間:2007-2024年
(出所)気象庁、総務省「家計調査」

猛暑による生活習慣の変化

猛暑による生活習慣の変化
(出所)オムロンヘルスケア株式会社「猛暑による生活習慣や健康状態への影響に関する調査」

「暑すぎる夏」が当たり前になる時代

外に出ず人と会わなくても宅配サービスなどの利用が増えるのではないか。このような見方もあるでしょうが、巣ごもり消費の押し上げ効果には限界があることがわかっています。「外に出ない」「人と会わない」という点で猛暑とコロナ禍は似ています。コロナ禍では消費支出が実質ベースで2割も減少したように、巣ごもり消費が増加しても消費全体を押し上げる効果は低いのです。

外での活動が増えないと消費は増えない──身も蓋もない結論ですがこれが事実です。環境省・気象庁によると、2100年末における最高気温30℃を超える真夏日は49日から105日(東京)になることが予測されています。となると、企業にとって猛暑による消費減少は、リスクではなく平常時の売上予測に織り込まなくてはいけない要素になったということです。暑すぎる夏が当たり前になる──企業も消費者もそろそろ覚悟しなくてはいけないということでしょう。