ネット情報との正しい向き合い方 -反応せず「思考力」をアップさせる3つの方法

7割のの反応が「炎上」を引き起こす

  • 人間は思考が苦手な生き物
  • ネット情報は速すぎて思考する隙を与えない。
  • 他者の「意見」に心を支配されて思考できない。

ネット情報にはこうした思考を阻害する要因が存在し、結果として生まれる現象が「炎上」です。

炎上はわずかな「火種」と「空気」によって起こります。ユダヤ教では10人の人がいるとしたら「1人は批判する人、2人は応援する人、残り7人はどちらでもない人」なので、豊かに生きるにはあなたを応援する2人と付き合えばよい、と教えるそうです。

私はネットの世界も同じような状態ではないかと感じます。炎上の「火種」となるのが10人のなかの1人であり、「空気」に相当するのが残りの7人です。この7人が先ほどの理屈で反射的に反応してしまうことで火が一気に燃え広がるのです。

7人それぞれが一呼吸置いて思考していれば何人かは応援に回るでしょう。多様な意見が形成されることで炎上は回避できるかもしれません。しかし先ほどの3つの要因が強烈すぎてあるべき姿にならない。そこが問題なのです。

反応せず「思考力」をアップさせる方法

私はネット情報に反応する人を一概に批判するつもりはありません。

  • 様々な意見や価値観の中で、自分の気持ちにフィットする意見に共感を示す。
  • 同じ価値観を持つコミュニティに参加する。

こうした行動はインターネットがなければ実現できなかったものであり、それで救われる人も少なくありません。面倒な思考などせず他者の意見に反応することで幸福に生きられるならそれはそれでいいでしょう。

しかし実際にはそうはなっていません。SNSやLINEに反応する毎日に生きづらさや虚しさを感じる人も少なくありません。

重要なのは反応と思考のバランスです。

「反応」はネット社会で生きる術として合理的な行動ですが、私はそれだけに依存するのは危険ではないかと感じます。ネット情報の7割は「反応」で処理するにしても、残りの3割は時間をかけて自身の内側と対話(思考)する必要があるのではないでしょうか。ではどうするか。

目新しいものではありませんが、私が「思考力」をアップさせるために効果的だと感じている3つの方法を紹介します。

【方法1】「デジタル断食」

一つ目の方法は誰もが思いつく「デジタル断食」です。

ネット社会の便益からあえて離れることで不便益を手に入れるというものです。

スマホを手放して「紙とペン」を持つ

デジタル断食するにはネット情報に接続するスマホをいったん手放す必要があります。「デジタルに覆われた日常」から離れるために「禅の日常」に触れる座禅体験ツアーなども話題になりました。

ただ座禅体験ツアーは頻繁に行けるものではありません。私が時々行っているのは「〇時以降はスマホに触らない」日を設けることです。どんなに興味深いニュースがあっても、仕事のメールが気になっても、その日の〇時以降はスマホの電源を切ってしまうのです。

スマホを手放す代わりに持つのが「紙とペン」です。

ある事実に対する自分の考えを紙に書き写す。書かれた文字は紛れもなく自分の内側から生まれたものです。その文字を読むと不思議と気持ちが落ち着いてくるのがわかります。私の場合、意味不明なことを書いていることのほうが多いのですが、それが今の自分を受け入れることにつながり、深い思考モードに入ることができるようです。

ここ数年、筆記具を購入する人が増えている理由の一つも「落ち着いて考えたい」と感じている人が多いからではないでしょうか。

「読書」をする

読書」もデジタル断食の手段の一つです。読書の最大の利点は、

情報に触れる速度を自分でコントロールできる」ことです。

消化できない速度で押し寄せる SNSのタイムラインと違い、本は自分の読解力と気分に応じて速度をコントロールできます。書かれてある内容(情報)は著者の「意見」ですが、SNSの投稿のようにその場で反応を求めたりしません。読書は著者の意見としっかり向き合うことができますので自然と「思考」につながります。

読書は自分に主導権がありますので、自分の問題意識や関心に合わせて読む本を選んだり、読み飛ばしながら必要な個所を探す自由もあります。

ちなみに私はタブレットで読書をすることが多いのですが、KindleではSNSやネット検索ができませんので、デジタル断食をしているのと同じ状態になります。

「リアル空間」に触れる

デジタル断食の3つめの手段はデジタルの反対側、すなわちリアル空間に触れることです。

ネット情報が他者の意見である限り、内容にいくら共感しても手触り感までは得られません。手触り感が得られない情報は翌日には次の情報に取って代わられる。そんな軽さを内包します。

手触り感を得たいとき、私はパソコンの電源を切って外に出るようにしています。

ある日、ネットスーパーや無人店舗の便利さを強調する記事を読み、もやもや感を覚えました。外に出て近所のスーパーに入ると、お客さんと店員が仲良く世間話をしている姿が目に飛び込んできました。「ここには無人店舗にはない価値がある」と、もやもや感の正体を知ると同時に、リアル店舗の価値について深く思考することができたのです。

【方法2】「一次情報」に触れる

思考モードに入る2つ目の手段は「一次情報」に触れることです。

一次情報とは意見や解釈が入らない情報の源流です。先のリアル空間も一次情報ですが、私が特に重視しているのは「統計」です。

ここで言う統計とは誰の意見も解釈も入らない純度の高い情報のことです。新聞や雑誌でも一次統計を取り上げたりしていますが、メディアが流すのは解釈の入った「記事」です。「第二四半期のGDPは〇%です」だけでは記事になりませんので、 「第二四半期のGDPは〇%に落ち込んだ。景気はまだ底打ちしたとは言えない。」といった解釈が加わります。解釈が加わった時点で一次情報としての純度は低下します。

思考モードに必要なのは解釈なしの情報ですので、私は統計情報をみるときは発表元に直接あたります。GDPの場合は内閣府のサイト、失業率の場合は総務省のサイトといった具合です。ただ発表元のサイトでも報告書は解釈が入っていることが多いので、なるべくExcelファイルになった数値を見ます。

先入観なしに統計をみると、その数値をどう解釈していいものか混乱することも多いですが、時系列でみたり、属性別にみたりするうちに点と点がつながったりします。時間はかかりますがそれが思考をしている証拠です。

【方法3】メディアサイトを選ぶ「スロージャーナリズム」

反応しづらいメディアサイトを選ぶことも重要です。

私が最近注目しているのが欧米で流行りつつある「スロージャーナリズム」です。現代のインターネットで量産されるYes-Noを迫る議論やフェイクニュースに対する反省として、時間をかけてでも正確で良質な情報発信を行う以下のようなネットメディアが勃興しています。

デ・コレスポンデント(De Correspondent)」(オランダ)
ディレイド・グラティフィケーション(Delayed Gratification)」(イギリス)
プロ・パブリカ(ProPublica)」(アメリカ)

これらのメディアサイトで流れる情報は既存のニュースにコメントを加えるようなものではなく、時間をかけながらじっくり調査されたものです。専門的な記事が多いため、読書のような感覚でスローに読み進めることができます。じっくり思考モードに入れますので私は時々これらのサイトを訪れるようにしています。

まとめ

これまでみたように、インターネットの出現で期待された「誰もが自由に他者の意見に触れ、自分の考えを発信できる思考社会」はそう簡単に手に入るものではないようです。

Yes-Noを迫る拙速な議論やフェイクニュースがあふれ、自分の気持ちに合うか合わないかで良し悪しを判断し「いいね」という反応行為で発信する。結果としてあちこちで炎上が頻発しています。

どうやら私たちは思考力をアップさせるための努力を意識的にしなくてはいけないようです。

  • スマホをいったん手放して「デジタル断食」する。
  • 統計などの一次情報に触れる。
  • 思考力を促す遅いメディアサイトにアクセスする。

こうした方法を意識的に取り入れながら反応と思考のバランスを取り戻す。「誰もが自由に他者の意見に触れ、自分の考えを発信できる思考社会」 はその先に見えてくるのではないでしょうか。