テレワーク

【テレワークと出社】最適なバランスとは-(2)「仕事の種類(解決型・発見型)」で決める

「仕事の種類」に注目

テレワークと出社の目安とは?

コロナ禍が収束しても続きそうな重いテーマですが、以前の記事では仕事に関わる「人の数」に注目し、以下のような結論を得ました。

  • 1人で完結する仕事はテレワークが最適
  • 複数で行う共同作業はケースバイケース(例:流れ作業系は出社、進捗会議はオンライン)
  • テレワークの課題は「仕事に向かない住環境」「Zoom疲れ」など

当然ながら「人数」以外にもテレワークと出社の目安につながる考え方や切り口はあるはずです。今回は仕事の「種類」に注目して目安を探ってみようと思います。

時代とともに変わる仕事のニーズ

解決より「発見」が求められる時代に

私たちの仕事は大きく2種類に分けられます。

問題を解決する仕事
問題を発見する仕事

です。従来の仕事は「物質的な不足・不満を解消すること」に比重が置かれていました。三種の神器という言葉に象徴されるように、戦後~高度経済成長期は物質的な不足を解消するための商品・サービスを提供することが企業の使命であり、消費者はこぞって洗濯機やテレビに群がったのです。物質的な不足という問題を解決する仕事が求められた時代です。

その後、三種の神器は各家庭に普及・浸透し、物質的な不足問題は概ね解消されました。不足が解消されると今度は「次に解決すべき問題はなに?」という問題不足に直面するようになります。日本人は問題を解決するのは得意ですが、問題を発見・定義するのは非常に苦手なようです。特に昨今はAIの発達で問題の解決方法はいくらでも見つけられますので、日本人が得意としてきた問題解決力の出番は相対的に少なくなっています。

今の時代に求められる仕事は「発見型の仕事」です。

  • 「すぐれた機能が揃っているのに売れ行きが悪いのはなぜか?」
  • 「この企業の商品に熱狂的なファンが多い理由は何か?」

こうしたまだ顕在化していない問題を発見する仕事が大きな価値を生む時代になっている。テレワークと出社の目安を考える上で、このような現状認識を持っておく必要があります。

「問題発見のための時間」を増やす

解決より発見が求められる時代。ではどうやったら問題を発見できるようになるのでしょう。

まずは問題発見のための時間を意図的に増やす。単純ですが量から入る作戦です。しかしそれには足元の「働き方」を根本的に見直す必要があります。

これまでの「働き方」は与えられた問題や課題を解決することに主眼が置かれていました。決められた作業に対し、上司や先輩の仕事ぶりをみながらスキルを磨いていく。この働き方は「解決型の仕事」には向いています。しかし、

包丁の腕はだいぶよくなったけど「作るべき料理」が思い浮かばない

といった状況に解決型の仕事はまったく向いていません。「こんな料理を出したら喜んでもらえるのでは?」という問題を発見できなくてはいけないのです。

発見仕事の時間を人事制度として設けているのが言わずと知れたグーグル社です。グーグルには自分の時間の20%を好きなことに使ってよいとする「20%ルール」があります。夢中で好きなことをする中で「こんな商品・サービスがあったらいいかも」という問題が発見できる。問題さえ発見できれば解決方法を考える人は世界中にいる。20%ルールにはこうした考えが根底にあります。

問題発見に必要なのは視野と行動を広げることです。20%ルールのように「好きなこと」が原動力となれば視野も行動もストレッチされ、日常業務では見えなかった発見が可能になります。

例えば地方銀行の営業マンの場合、

  • 営業エリアの地域活動に参加する(地域問題の発見につながる)
  • 住民に地元企業に対する印象を聞いてみる(財務データにない価値を発見できる)
  • 個人顧客と趣味の話をする(価値観に刺さる商品提案につながる)

こういった金融業務とは直接関係ない時間を設けることで視野が広がり、見えなかった顧客企業の価値や個人顧客の悩みを知る機会になるはずです。

テレワークを活用して「発見仕事の時間」を増やす

問題発見の時間が重要なのは理解できた。しかし、

「自分の会社はグーグルのように問題発見の時間を増やすルールなんてない」

こう感じる人がほとんどではないでしょうか。実際グーグルのような制度を設けている企業はほとんどないのが現状です。「ルーティンワークに日々追われながらプラスアルファで問題発見の時間を設ける」なんて不可能のように思えてきます。

しかしコロナ禍以降、テレワークという新たな働き方が増えたことで問題発見の時間を作ることが可能になってきました。テレワークと出社のメリット・デメリットを踏まえ、問題解決の時間(ルーティンワーク)と問題発見の時間を効率よく配分すれば実現可能です。具体的には下の図のように、問題解決型の仕事と問題発見型の仕事を出社とテレワークで効率よく振り分けるイメージです。

仕事の種類と勤務形態の関係

仕事の種類と勤務形態の関係

解決型の仕事

出社に向く解決型の仕事

チームで仕事を進めるときには時々リアルで顔を合わせることも必要になります。解決仕事ではやるべき作業や分担は明確になっていますが、

  • オンラインではメンバーの表情が読み取りにくい。
  • 期限が迫っており、ゴールに向けてメンバーの士気を高めたい。

といったときは、一度オフィスに集まってお互いの顔を見合わせ、熱量を共有することも必要になるでしょう。

テレワークに向く解決型の仕事

一人で完結する定型業務であれば、わざわざ時間をかけてオフィスに出向かなくともテレワークのほうが自分のペースで効率よく作業できるでしょう。

解決仕事の場合、打ち合わせのほとんどは上司やメンバーへの「ほうれんそう(報告・連絡・相談)」が中心になります。決まった作業の進捗報告と情報共有であればオンライン会議で十分意思疎通できるでしょう。

発見型の仕事

出社に向く発見型の仕事

コロナ禍で出社が制限されたことでよく耳にするのが、「他部署の人と雑談したり意見を交わす機会が少なくなった」というものです。オフィスでは社内の色々な人と交流することで自分では気づかないようなアイデアや問題を発見することも多いはずです。こうしたセレンディピティ(予想外の発見)の機会が減ることは発見仕事にとって致命的となりかねません。

発見仕事には「人との関わり」と「遊び・楽しさ」が必要です。他部署の人とリアル空間で関わる機会を増やす必要性は高まっています。働き方の先進企業として知られているサイボウズという会社。かつては4人に一人が辞めていく状況だったそうです。それを改善するため「部署を越えて社員が仲良くする場づくり」を行ったそうです。

ここ数年で社内カフェのような交流空間を設ける企業も増えました。コロナ禍以降はパーテーションを取って図書館のようなオープンな空間にオフィスを再設計する動きも強まっているようです。大手ITベンダーのNECはコロナ禍の2年間でほとんどの作業はリモートワークでできるようになりました。しかし、少し離れたメンバーとのコミュニケーションや、幹部とヒザ詰めで話をする機会も大幅に減ったことの弊害がでているとのこと。そこで、出社するときはフェイストゥフェイスでの業務が必要な時に限定するなど、オフィス空間はコミュニケーション・ハブとして機能させているそうです。

オフィスの役割が「作業の場」から「体験の場」になれば、発見機会を得るために出社する社員も増えるでしょう。

テレワークに向く発見型の仕事

リモートワークでもっとも期待されるのが「外での活動時間」が増えることです。

リモートワークは自宅で作業する時間と外で活動する時間を効率的にコントロールできます。顧客企業の商品・サービスを顧客になって体験してみる。地域活動に参加することで地域の課題を発見する。外での活動時間は問題探しの絶好の機会になります。

まとめ

テレワークと出社の目安を仕事のタイプ別に対応させる方法についてみてきました。以下が要点です。

  • 問題を解決する仕事より問題を発見する仕事が求められるようになってきた。
  • 日本企業には問題発見に時間を振り分ける制度がない。
  • テレワークという勤務形態が加わったことで問題発見の時間ができる可能性が出てきた。
  • 「解決型:発見型」×「出社:テレワーク」で仕事を整理してみる。
  • 解決型の仕事
    出社のほうがオンラインでは読み取りにくいメンバーの表情を確認しながら熱量を共有できる。
    決まった仕事の進捗報告(ほうれんそう会議)はオンラインで十分
  • 発見型の仕事
    出社のほうが社内の色々な人と交流するセレンディピティ効果が期待できる。
    地域活動への参加など「外の時間」を増やすにはテレワークがベスト

このようにテレワークと出社を仕事のタイプ別に対応できれば、「出社率〇%」のような単純な議論から解放されるのではないでしょうか。

「人数」や「仕事の種類」以外にも目安になりそうな考え方や切り口はありそうです。新しい切り口が見つかったらまたブログで紹介していきたいと思います。