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【楽器ブーム】低迷する音楽業界を救えるか -楽器は音楽熱を高める

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コロナ禍の「楽器人気」

周知のようにコロナ禍で音楽業界はかつてない危機的状況にあります。予定されていたフェスやライブのほとんどが中止や延期となりました。会場の感染対策の準備をした上でライブを開催する動きも出始めましたが、感染再拡大と2度目の緊急事態宣言で再び暗雲が立ち込めています。

何より悲劇的なのは、音楽の創造主である肝心のアーティストが消えていく可能性が強まっていることです。バドワイザーが昨年6月に行ったアンケート調査では、アーティストの2人に1人はコロナ禍で活動を諦めようと思っているそうです。非常に悲しいことです。

音楽を創造し届けるアーティストが困窮する一方、リスナーサイドでは改めて「音楽の力」に魅了される人が増え始めています。それを象徴する現象の一つが「楽器人気」です。

下のグラフは楽器の販売数量を種類別にみたものです。演奏時の飛沫が問題視された管楽器は低迷していますが、ギターの販売数量は大きく伸びています。電子キーボードも手軽な巣ごもり楽器として昨年後半から急激に販売数量を伸ばしています。

「楽器」販売数量の推移

楽器の販売数量の伸び率(前年同月比)

コロナ禍で楽器を手にする心理

楽器は「時間消費型」趣味の最高峰

コロナ禍の楽器人気は世界的な現象のようです。不要不急の外出は禁止されても、不要不急の「巣ごもり趣味」は禁止されていません。

自宅時間が長くなると、休みの日などは、ゲームのようなさくっとできる趣味よりある程度腰を据えて取り組むようなものをしてみたくなるものです。読書もそうですし、最近はお菓子作りのような時間をかける調理も人気のようです。

そのなかでも楽器は「時間消費型」趣味の最高峰と言っていいのではないでしょうか。私はギターを弾くのが趣味ですが、一つの曲やフレーズを覚えるのにあっという間に数時間が経ちます。うまく演奏できないとそこから泥沼のような練習地獄に突入し、最後は肘が痛くなってやめるのですが。

かけっぱなしの音楽に触発されて

Spotifyのようなストリーミング・サービスが普及したこともあり、コロナ禍では音楽を聴く量と時間帯が増えているそうです。

ニールセンの調査によると、ストリーミング・サービスの利用シーンとして、これまでは通勤・通学の移動時間帯である朝と夕方がほとんどだったのが、コロナ禍では朝から夕方まで継続的に利用されていることがわかったそうです。

日常空間に音楽があふれるようになると何が起こるでしょうか。

楽器を手に取りたくなります。

ロジックはこんな具合です。

  1. 在宅時間の長期化で音楽を浴びる量が増える
  2. 好きな曲や弾いたことのある曲が流れる
  3. 思わず楽器を手にとって弾き始める

楽器を持っていない人でも、一度は楽器を弾いてみたいと思ったことのある人なら、好きな曲を聴きながら「楽器を弾いてみたい」「この曲が弾けたら」という感情が呼び起こされたりするのではないでしょうか。

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楽器が「音楽熱」を高める

在宅時間が多くなって音楽を浴びる機会が増し、楽器を弾きたくなる。そして今度は、楽器を弾くことを通じて音楽やアーティストの新たな魅力に気付く。楽器は「音楽熱」を高めることにつながります。

楽器のはまり方は「読書」に似ている

「どんな気持ちでこんな素晴らしい曲を作ったのだろう」
「どれだけ練習すればこれほどの演奏技術を身に付けられるのだろう」

好きなアーティストの曲を弾いていると、そのアーティストの新たな魅力に気付かされることは多々あります。曲の持つ世界観、コード進行の面白さ、演奏技術の高さなど、驚かされることばかりです。

感覚としては読書に似ています。コロナ禍では読書をする人が増えました。読書ははまり込むと「この著者はどんな気持ちでこのストーリーを考えたのだろう」「どれだけ本を読んだらこんな文章が書けるようになるのだろう」といった気持ちが湧き、著者をより身近に感じられるところが楽器と似ています。
参考記事:「コロナ禍で見直される「読書」の価値」

アナログレコード人気に拍車がかかる

読書にも似た感覚で楽器を通じて好きなアーティストを身近に感じる。そうすると手触り感つながりで、そのアーティストの曲を聴くときもアナログレコードをかけて心して聴きたくなります。

アナログレコードの盛り上がりは以前の記事で紹介しましたが、その後もレコード人気は根強く続いています。
参考記事:「レコードの復活 -再評価につながった4つの要因」

アナログレコードの売上は外出自粛の影響もあって昨年夏ころまでは伸び悩んでいました。アナログレコードはリアル店舗で手に取ってみてこそ購入する気になるものです。リアル店舗に行けない時期はなかなか売れません。しかし秋口以降、人の動きが戻ってくるにつれてアナログレコードの売上も戻ってきました。低迷が続いているCDと対照的な動きです。

アナログレコードとCDの売上金額

アナログレコードとCDの売上金額

楽器とアナログレコードの共通項は「リアル」です。外出自粛で音楽を浴びる量が増えたことで特定のアーティストにはまり込み、アーティストをより身近に肌で感じようとアナログレコードを購入させる。

楽器を手にして好きなアーティストの曲を弾けばアーティストの世界に触れる感覚が得られる。楽器とアナログレコードというリアルなツールを通じて音楽熱はさらに高まります

高まる音楽熱を音楽業界の復活につなげる

音楽熱を冷ましてはいけない

非常に残念なのは、楽器を手にしたりアナログレコードを聴いたりと、コロナ禍で人々の音楽熱は心の奥底でふつふつ湧き上がっているというのに、肝心の音楽業界が大打撃を受けている事実です。

音楽業界はオワコンどころかさらに盛り上がる可能性さえあります。それなのに音楽の創り手が次々消えていくという皮肉。このままでは行き場を失った音楽熱だけが取り残されてしまい、創造主のいなくなった音楽業界は地盤沈下していくことになりかねません。

音楽の創造主を引き留め、音楽業界の光を取り戻すにはどうしたらいいのか。

音楽熱の最終的な行き場は「ライブ」であることに変わりありません。しかし感染が収束に向かうまでは本格的なリアルのライブは難しい。

まずはリアルのライブが本格的に実施できるまで、せっかく高まった音楽熱を冷めさせないようにしなくてはいけません。今もオンラインライブなど様々な試みがされてますが、楽器をキーワードにするのも面白いかもしれません。

ミュージシャンとオンラインでセッション?

これは私の勝手な想像ですが、好きなミュージシャンとオンラインでジャムセッションできるサービスなどがあったら非常に面白いと思います。好きなミュージシャンとオンラインでジャムセッションなんて夢のまた夢のように思えますが、リアルで行うより気軽にできるのがメリットです。

しかもリアルの場合は一度にセッションできる人数に限界がありますが、オンラインであれば人数のキャパシティはもっと広がります。

オンラインでも音楽熱を解放できるサービス

こうしたサービスがどんどん増えれば、リアルのライブまで音楽熱は冷めることはないでしょう。冷めないどころか、ますます音楽熱はさらにヒートアップするかもしれません。

音楽の創り手が消えてしまわないよう、リアルでもオンラインでも収益化できる仕組み作りを急がなくてはいけないと思います。

楽器は好きな音楽やミュージシャンをもっと好きにさせてくれます。楽器を弾いてみたいと思っている音楽好きの方、楽器を購入してみてはいかがでしょう。

【追記】俳優の中川大志がサックス演奏で応援

俳優の中川大志とウルフルズのトータス松本が、ヤマハミュージックジャパン「おかえり、おんがく。」のスペシャルムービーに出演した際の映像をみました。「おかえり、おんがく。」は2020年10月に始まった人々を音楽で応援しようという企画です。

俳優の中川さんはこの企画でサックスに挑戦しています。下記の動画で必死で練習する姿がみられます。音楽好きだった中川さんがサックスと向き合う中でますます音楽への熱量が上がっている様子がよくわかります。
「中川大志、サックスはじめる」

はじめてのサックス、
その音色は、勇気に変わる。
音楽を、あきらめてしまっていた人への、
音楽を、はじめてみたい人への、
演奏する喜びが、ここにある

YAMAHAホームページ「中川大志、サックスはじめる」より

楽器を通じて音楽のすばらしさを伝えたいヤマハ社の想い、熱いです。